5月の勉強会内容 土壌分析の意味とその活用法NO3
トマトの養分の吸収のバランスと考え方
トマトの養分のマイナスイオンとしての吸収バランスは下記の通りです。マイナスイオン | NO3- | PO4- – - | SO4- - |
個数 | 7me/ℓ | 2me/ℓ | 2me/ℓ |
14×7=98ppm | 10.5×2=21ppm | 16×2=31ppm |
プラスイオン | K+ | Ca ++ | Mg++ |
個数 | 4me/ℓ | 3me/ℓ | 2me/ℓ |
39×4=156ppm | 20×3=60ppm | 12×2=24ppm |
ECの値に直すとECはマイナスイオンを測定していますのでN 7me + P 2me + S 2me = 11me/ℓですから、蒸留水に1リットルにこれらを溶かすと下記のように成ります。
11×0.1414ms/cm=1.5554mS/cm(11イオン当量me溶けたことになります)
KNO3 硝酸カリウムを例にした場合はイオンの価数が1ですので
↓ ↓
39 + 62 =101g(1モル)。1000ℓの蒸留水に硝酸カリウム101g溶かすと1イオン当量(1me)溶かしたことになりますのでECは 0.1414mS/cmとなります。
Ca(NO3)2 硝酸カルシウムを例にした場合はイオンの価数が2つありますので
↓ ↓
40 + 62×2 =164g。1000ℓの水に164g(1モル)の硝酸カルシウムを溶かすと2イオン当量(2me)溶かしたことになりますのでECは 0.2828mS/cmとなります。
MgSO4 硫酸マグネシウムの場合も硝酸カルシウムと同じ考えで2イオン当量(2me)溶けることになりますので
↓ ↓
24 + 32 + 16×4 = 120g 1000ℓの水に120g(1モル)の硫酸マグネシウムをいれるとEC 0.2828mS/cmになります。以上は全て蒸留水に溶解させた場合です。
この関係式が微量要素まで全て必要になります。
N 7me + P 2me + S 2me = 11me マイナスイオン
K 4me + Ca 3me + Mg 2me = 9meプラスイオン
一般的な植物の場合はマイナスイオンme - プラスイオンme=2me以上ないとだめ。
↓
植物の方程式 これが0の場合は当然PHは7と成ります。この数でPHの計算も出来ます。
この数値はイチゴ、ナス、キュウリ等植物には特有のバランスが全部あります。
マイナスイオンmeープラスイオンme=2me以上ないと植物は吸収できない場合があります。
原水の水質検査や土壌分析による土壌溶液の濃度を計算にいれて上のバランス式を考えないといけない。
N 98×2=196ppm P 21×2=42ppm S 32×2=64ppm K 156×2=312 Ca 60×2=120 Mg 24×2=48
微量要素の中にもプラスイオンとマイナスイオンがあります。モリブデンはマイナスイオン、鉄、マンガン、銅、亜鉛はプラスイオン。マイナスイオンよりもプラスイオンの方が多かった場合は植物が養分を吸収出来ない場合が殆んどです。
リン酸と鉄、硫酸と鉄、リン酸とカルシウム、硫酸とカルシウムは直ぐに結合して沈殿してしまいます。鉄やカルシウムはキレート状態にすると、結合しなくなります。
トマト 土壌溶液のECが 3.0mS/cmの場合、土壌EC(1:5)に直すと、蒸留水5に対して土1の割合で振透して測定しますので、3.0÷6=0.5mS/cmの式が成り立ちます。これが根から吸収されて、トマトの導管を通る時には、EC 3.0mS/cm×10倍濃縮=30mS/cmとなっています。土壌溶液の中に硝酸態窒素が196ppm存在する場合あ、196×10=1960ppmのNO3ーNになってトマトの導管を通って行きます。老化した1番下の葉は、硝酸態窒素の還元酵素が殆んど無くなっているため、窒素同化作用ができないため、NO3-Nの値は1960ppmになっています。しかし、生長点から4枚目の葉になると、十分な光が当たり、リン酸の吸収が良く、硝酸態窒素の還元酵素働きが良いため窒素の同化が進むため、400ppmと、1/5位の値になっています。この値は一日の中でも時間帯によって変化があります。
光合成を活発にしている所になればなる程、NO3ーNの量は下がっていきます。NO3ーNが糖分C6H12O6を原料にしたり、エネルギーとして、消化されていきます。ですから、天気が良いお昼頃の生長点付近の葉柄の硝酸態窒素の濃度は100ppm前後になっています。
日照不足の時、下葉を摘葉して整理しておかないと無駄な窒素が蓄積して、下葉に病気が発生します。無駄な窒素が多いと葉のC/N率が低下するため直ぐに病気が発生します。
カリウムも10倍に濃縮されて 3120ppm位で導管を通っていきます。
→ 葉に入ってから水分が葉温を下げたり、光合成で消費されますので、葉に入っていくとカリウムはどんどん濃縮されます。1番濃縮される時間帯が、光合成がピークに達する12時過ぎから1時位までです
→ 蒸発や光合成によって約3倍位に濃縮されます。晴天の時は特に顕著に現れます。
→ 1時位の生長点から4枚目の葉柄のカリウム濃度は8000~9000ppmにも成ります。
キュウリ | |||
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マイナスイオン | NO3- | PO4- - - | SO4- – |
13me + 3me + 4me = 20me | |||
プラスイオン | K+ | Ca++ | Mg++ |
6me + 7me + 4me = 17me | |||
20me-17me=3meトマトよりも酸性でないとだめ。 | |||
イチゴ | |||
マイナスイオン | NO3- | PO4- – - | SO4- – |
5me + 1.5me + 2me = 8.5me | |||
プラスイオン | K+ | Ca++ | Mg++ |
3me + 2me + 1me = 6me | |||
8.5me-6me=2.5me |
微量要素
- Fe 鉄
- 鉄は鉄蛋白質を作り、細胞の分裂組織に多く含まれ、色々と生理的な重要な役割を果たしています。
- Mn マンガン
- 光合成に関わる酵素蛋白質を作り、光合成時の酸素の発生に重要な役割を果たしています。
- Zn 亜鉛
- 光合成に関わる酸化還元反応を行う特別な蛋白質を作ります。また、窒素の同化を促進させるための酵素を作り、生理的な調整を行っています。
- Cu 銅
- 銅蛋白色素や銅酵素蛋白質を作り、光合成に重要な役割を果たしています。不足すると病気に対して非常に弱くなります。
- B ホウ素
- 糖分の転硫 トマトの樹液中に5ppm~10ppm必要→3ppm以下に下がったら生長点が必ずおかしくなります。同心円状に果実が割れてくる等の生理障害が発生します。
- Mo モリブデン
- NO3ーNをNH4ーNに変える硝酸態窒素還元酵素です。不足するとビタミンCや糖度が低下します。
灰色かびが出る → Cuが無くて老化が早い、Znが無くて窒素の酵素蛋白がやられて、未消化Nが多くなっている。
うどんこ病が出る → Moが無くてNO3ーN → NH4ーNに変化しないからうどんこのエサになっている。
ガク割れ、玉割れ、生長点がおかしい → ホウ素が足りないため糖の転流がうまくいかない。
微量要素のバランスも各作物で全部決まっています。不足した場合は葉面散布が無難です。
イチゴの葉柄には銅、亜鉛がたっぷり入っています。それが逆に言うとイチゴの微量要素組成になっています。
イチゴの葉柄にはホウ素が常に15ppm位流れています。イチゴはモリブデンもトマトの3倍位ないとだめ。→ 不足すると直にうどんこ病、タンソ病になります。硫黄が不足するとダニの発生が多くなります。
太陽熱消毒 温度で効果を出すには最低でも80℃以上ないと無理です。フザリウム、ピシウムは厚膜胞子を作って中に閉じこもっているので防除が難しい。ハウスの天井ビニールと畝のマルチングビニールの両方行わないと、80℃にはならない。このようなことをしっかり行って、天気がいい日が1日あれば80℃になります。80℃になるのは深さ5cm位までです。
熱が深く浸透するには水分がないとだめです。乾いていると80℃になるのは表面だけになります。水を張ってもいいが、水の溜まっている所は、なかなか温度が上がらない。天気がいい日に水で土壌を湿らせてビニールマルチして密閉すると1日で消毒ができます。
土壌の還元状態を作り、土壌を酸欠にする方法もあります。米ぬかを少し表面に散布しておいて水で土壌を湿らせて、ビニールマルチをします。米ぬかは水分があると発酵してきます。 → ビニールで蓋をされると還元発酵をします。それで、土壌を酸欠にし病原菌の呼吸を止めて殺菌する方法です。両方やった方がよいようです。雑草の種、虫、虫の卵を全部やっつけこともしっかり行えば可能です。雑草の種は40℃以上に30分以上遭遇すると蛋白質がやられます。