① 光線管理の診断

光の管理の中で糖度計を活用して分かることは、しっかりと光合成をしているかどうかは、糖度が高いか低いかを比較してみると分かります。
糖度を比較してみることで良い作物か悪い作物かも分かります。
糖度を24時間定期的に測定してみると、時間と共に刻々と糖度が変化していくのがわかります。ですから糖度が高いか低いかを比較する場合は同じ時間帯で行なわなければならないわけです。このため当社では測定時間と天気の状態が分かれば計算で糖度が分かるようなシステムになっています。
また、日当たりの良い葉と悪い葉では明らかに糖度に差があります。天気の良い日と悪い日でもやはり糖度が相当違います。ビニールハウスなどの温室を使った作物の栽培では、ビニールなどの被覆資材の良し悪しや汚れも光合成に大きく影響するため糖度にも違いがでます。
このような温室を使った作物の栽培ではルックス計を使ってその作物が何ルックスの日照量が必要か前もって調べておけばよいわけです。
1日の中で糖度が一番高くなる時間帯と、反対に低くなる時間帯があります。また測定値がハッキリと見える場合(糖分だけ)とボヤケテ見える場合(糖分に澱粉が混じった)とがあります。ハッキリと見えたり、ボヤケテ見えたりするのは糖分の変化によるもので、このことも作物を栽培する上で生育状態を判断する重要な意味を持ちます。

各作物は光合成によって糖を生産するため光線管理は非常に大切なことである。作物にはそれぞれ適正な光の強さや、日照時間の範囲がありそれは糖度計とルックス計を使って調べることができます。
表-1と表-2はイチゴの糖度測定の例だが、このように汁液の糖度診断を行なうことによって、イチゴの同化能力が診断できる。表-1と表-2の樹液診断はイチゴの葉柄を直接糖度計で汁を採取測定するものである。このように各葉部位葉柄の差は0.5度位で推移するのが最も良くこの差が開き過ぎても、縮み過ぎてもイチゴの生育状態は悪いことになります。また、老葉~成葉~幼葉へと順次高くなっていくバランスが良く、成葉の糖度が老葉の糖度よりも低い状態では栄養的な問題があります。

定植活着後頂花房が開花する時期までの理想的樹勢バランス

表-1   (晴天時15:00に測定)

測定項目 品種 老葉 成葉 幼葉
葉色 - 濃緑色 緑色 黄緑色
糖度 佐賀ほのか 10.0度以上 10.5度以上 11.0度以上
糖度 あきひめ 9.0度以上 9.5度以上 10.0度以上

収穫期間中の理想的樹勢バランス

表-2   (晴天時15:00に測定)

測定項目 品種 老葉 成葉 幼葉
葉色 - 濃緑色 緑色 黄緑色
糖度 佐賀ほのか 9.0度以上 9.5度以上 10.0度以上
糖度 あきひめ 8.0度以上 8.5度以上 9.0度以上

イチゴの糖度診断と葉面積

植物(イチゴ)の葉面積と糖度診断には大きな関係があります。植物の葉柄による糖度診断の前提として、イチゴを例にとって見ると一株当たり一定の葉面積が確保されていることが大切です。表-3と表-4はイチゴの葉面積と糖度の関係と収穫量、果実の品質を現したものです。

表-3佐賀ほのか

一株当たりの葉面積(cm2 平均葉柄糖度(度) 一株当たり糖の生産指数 果実の平均糖度(度) 適正着果数
一果重
15g
一果重
20g
一果重
25g
1.000 9.5 100 12 24 16 12
800 9.5 80 11 19 13 10
1.000 8.0 84 12 20 13 10
800 8.0 67 11 16 11 8
1.000 7.0 73 11 18 12 9
800 7.0 59 10 14 9 7

※佐賀ほのか一株当たり葉面積1.000cm2で平均葉数6~7枚の場合、一株当たりの糖分の生産指数を100とした場合の算定で果実の糖度を表に示した場合の一果重15g~25gにおける果実の生産量(一株当たりの個数)です

※糖分の生産指数を100とした場合の10a当たりの収量は約9.000kgです。

表-4あきひめ

一株当たりの葉面積(cm2 平均葉柄糖度(度) 一株当たり糖の生産指数 果実の平均糖度(度) 適正着果数
一果重
10gg
一果重
15g
一果重
20g
800 8.5 100 12 27 18 14
650 8.5 81 11 22 15 11
800 7.5 88 12 24 16 12
650 7.5 72 11 19 13 10
800 6.5 76 11 21 14 11
650 6.5 62 10 17 11 9
※あきひめ一株当たり葉面積800cm2で平均葉数6~7枚の場合、一株当たりの糖分の生産指数を100とした場合の算定で果実の糖度を表に示した場合の一果重10g~20gにおける果実の生産量(一株当たりの個数)
※糖分の生産指数を100とした場合の10a当たりの収量は約9.000kgです。
このように一株当たり一定の葉面積がある場合は、葉柄の糖度(糖の生産力)が果実の品質や、一果重及び一株当たりの着果数つまり収量に大きく影響することがわかります。このように日照が少なくなってくる収穫時期はそれに伴って葉柄糖度が低下してくると同時に、表-5から解りますように開花から収穫までの日数が30日から50日掛かるようになってきます。
収穫期の作物(イチゴ)が光合成によって生産する糖分(炭水化物)は果実への転流だけではなく植物体全体に転流して行きます。その糖の配分率は茎葉に約30%、果実に約40%、根部に約30%位です。しかし日照不足になると果実や茎葉、根部への転流する養分の量が少なくなっていきますが、その中でも特に根部に対しての養分の転流が不足します。天気の良い時でも根部への養分の転流は、収穫果実の抱えている植物の生理状態の場合は常に後回しとなってしまいます。ですから尚更日照不足になると、根への養分の転流が後回しとなって根が弱ってきます。
そうなると農家の皆さんが良く語る、「成り疲れ」という症状になり、イチゴ等は生長点から葉水を打たなくなります。

収穫時期による各葉位の葉柄糖度と開花から収穫までの日数

表-5   (晴天時15:00に測定)

収穫時期 開花から収穫までの日数 老葉の糖度 成葉の糖度 幼葉の糖度
10月上~11月上 30日 9.0度以上 9.5度以上 10.0度以上
11月中~12月中 40日 8.0度以上 8.5度以上 9.0度以上
12月下~2月上 50日 7.0度以上 7.5度以上 8.0度以上
※開花から収穫までの日数は品種によって若干(4~5日)前後します。
糖度は光合成の力を表すものです。作物の生育状態を把握する上で最も基本的なポイントは光合成によって生産される糖分(炭水化物)です。糖度計の診断はこのような考え方に基づいた方法です。
糖度診断の「上・中・下のバランス」とは、上(幼葉)・中(成葉)・下(老葉)位の葉柄糖度を比較することによって作物体内の養分がどのように動いているのかを、およそ把握するものです。つまり作物体の上位の糖度が高く、下位が低い場合は根部(下部)から水や養分を順調に吸収して生長点(上部)の方に運んでいく力があることを示し活発に生長していることがわかる。一方上部と下部の差があまりない場合は、根で養分の吸収できてもなんらかの原因で、上まで運べず生長が滞りがちになっているということが分かるのです。

②温度管理の診断

1日のうちで日中や夜間の温度管理(気温、地温、葉温)のためには温度計を使って管理をしています。
また、特に光合成を行なっている日中の午前中には作物が効率良く太陽エネルギーを利用できているかの、光合成促進温度を調べるためには、糖度計を使って朝太陽が出る前の作物の葉柄糖度と、正午の葉柄糖度の差を比較すると良く分かります。さらに呼吸消耗温度が適正であるかを知るためには作物の正午の葉柄糖度と夕方の葉柄糖度の差を比較すると良く分かります。
また、同化養分の転流温度がうまくいっているのかどうか、転流温度が適性であるか、高く経過したか低く経過したかこれも糖度計で判断することができます。作物にとって温度管理は重要なポイントの一つです。

表-6はイチゴの平均的な生育ステージ別の温度管理です。

表-6イチゴの温度管理

イチゴの生育ステージ 限界最高温度 適温 限界最高温度
花芽の発達~開花○ 10~13℃ 15~25℃ 28℃
開花~受精 ◎0 15~25 35
開花~果実の成熟○ 10~13 15~25 28
果実の肥大 昼温
夜温
10~13
5~8
18~25
8~10
35
16
果実の熟成 10 15~20 30

※但し、○は花芽形成も考えた温度です。◎は受精はできませんが生殖器官は被害は受けません。

例えば、イチゴの場合、幼葉の葉柄と成葉、老葉の各部位の糖度差で温度管理の良否がわかる。表-7に示したように、イチゴの老葉、成葉、幼葉の糖度差を調べ、その結果で次のように温度管理の適否を判断します。

表-7イチゴの転流温度と糖度の変化(度)

転流温度 老葉 成葉 幼葉
高い 8.0 8.1 8.2
低い 5.5 6.5 12.0
適温 9.0 9.5 10.0

①老葉、成葉、幼葉の糖度が平均的に低く老葉、成葉、幼葉の糖度差が殆んどない場合は夜温(転流温度)が高すぎる。

②老葉、成葉の糖度が低くなり幼葉の糖度が異常に高くなり老葉、成葉、幼葉の糖度差が大きくなり、特に幼葉の糖度差が極端に広がっている場合は夜温(転流温度)が低すぎます。

③老葉、成葉、幼葉の糖度が表-8のように平均的に高く、老葉、成葉、幼葉の各葉位の糖度差が0.5位で推移している場合は夜温(転流温度)の管理が適正に行われていることを意味します。

収穫期間中の理想的樹勢バランス<参考資料>

表-8   (晴天時15:00に測定)

測定項目 品種 老葉 成葉 幼葉
葉色 - 濃緑色 緑色 黄緑色
糖度 佐賀ほのか 9.0度以上 9.5度以上 10.0度以上
糖度 あきひめ 8.0度以上 8.5度以上 9.0度以上

③水分管理

水分管理のポイントは、作物はどれくらいの水を必要とするのだろうかということを把握することです。pFメーターなどを使用して、土の中の水分が過不足にならないようにその作物にとって必要な水分量を考えて管理するためには、その灌水方法や灌水量がどれくらいが良いかを圃場に合わせて現実的に検討する必要があります。
キュウリを例にとって見ると、水の吸収量は夏の晴天時(気温28℃)の収穫最盛期で、1日1株当たり6~7ℓになる。その水分の流動状況をどのように調べるかは2つの方法あります。
まず、収穫した果実のヘタの切り口を逆さまにしてヘタの切り口から汁液が1滴、滴下するまでの秒数を調べる方法である。滴下までの秒数が30秒以内なら体内水分が多く、60秒以内なら体内水分が適量、60秒以上なら体内水分が不足していることになる。
次に、糖度の差からキュウリ体内の水分の流動状況を調べる方法です。キュウリ果実の頭部、腹部、尻部の糖度を測ります。その結果で次のように判断できます。頭部、腹部、尻部の糖度がそれぞれ4.0°、4.5°、5.5°の場合は水分が多いことが解ります。頭部、腹部、尻部の糖度がそれぞれ4.5°、4.7°、5.0°の場合は適量です。頭部、腹部、尻部の糖度がそれぞれ5.0°、4.7°、4.5°の場合は水分が不足がちです。
イチゴの場合はどうでしょうか。イチゴでも方法は2つあります。1つは生長点に葉水があるかどうかで調べる方法で誰でも簡単に解ります。
もう1つの方法は、やはり糖度差から調べる方法です。
イチゴの生長点の葉水の状態によって、幼葉、成葉から全て水滴が吹き出ている時は水分が多い状態です。幼葉だけから水滴が出ていれば水分管理が適正です。幼葉から水滴が出ていなければ水分が不足がちです。
また、イチゴの果実の糖度差による診断方法では、頭部、腹部、尻部各部位の糖度の格差が0.5°以内までは水分の転流状況は順調とみなされるが、それ以上の格差、あるいわ差が0.3°以下では、「やや不良」、「不良」と判定されます。具体的には、頭部、腹部、尻部でそれぞれ11.0°、12.0°、13.0°であれば水分の転流状況は不良、12.0°、12.5°、13.0°であれば適量と判断できます。

④肥料養分バランスの診断

生育ステージ、時間でわかる養分バランス

肥料として与えた養分は、適正にバランスがとれていなければなりません。そのバランスが適正かどうかを調べるには、PC(ピーシー)キットを使って植物体分析をしてみることが必要です。その結果で、窒素、リン酸、カリ、カルシウム、マグネシウムがバランス良く吸収されているがどうかを判断し、過不足があれば土壌の状態を調べ、肥料があるのに吸収できないのか、肥料がないのかを判断します。
その場合に非常に大切なことは、この肥料として与えた養分バランスとは、糖度に対しての窒素含量、リン酸含量、カリウム含量、カルシウム含量、マグネシウム含量のバランスのことであり、この値が生育ステージによっても、1日のうちでも変わってくるということです。

樹液糖度に表れる肥料養分バランス

ここで、とりあえず温度条件を無視し、二酸化炭素と水がどこでも一律にたっぷりあると仮定するならば、生産される炭水化物は光エネルギー、つまり日照によって決まるといえます。そして、日照量が一定ならば、その作物の生育ステージに固有の同化力があることをあらゆる作物の糖度分析によって私は発見しました。
例えば、トマトの収穫時期、午前12時の糖度における各養分のバランスをみてみましょう。第2表のように糖の高低差で各養分が変化します。但し、この場合の条件として、EC、pH、ORPの数字が許容範囲に入っていて、根が十分に栄養分を吸収できる状態にあることが必要です。また、糖度は作物全体の平均糖度であり、作物体で上下の差があることが前提です。

第2表 トマトの糖度と各養分のバランス(収穫時期、午前12時)

糖度 養分
N P K Ca Mg
6° 1,000 850 6,500 600 450
5° 500 600 5,000 500 360

(単位:ppm)